昨年に続き7月下旬頃、組織マネジメント系の学会であるThe Academy of Management (AOM) のAnnual Meetingに参加するため、アメリカのフィラデルフィアに行ってきました。フィラデルフィアは、初めての訪問になります。
今回はカナダでの乗り継ぎでしたが、トロント空港でアメリカの入国・税関審査が行われました。そのため、アメリカ国内では飛行機を降りた後、荷物を受け取ってそのまま空港を出るだけでした。
フィラデルフィアと聞くとどのようなことが思い浮かぶでしょうか。
家族からは「(映画)ロッキーの舞台」、「フィリーズチーズステーキ」しか出てきませんでした。ニューヨークとワシントンD.C.の間にあるペンシルベニア州の最大都市であり、アメリカ独立宣言が採択された場所としても有名ですが。
●報告タイトルに「CSR」を用いたものが目立つ
今年のAnnual Meetingは、開催場所がアメリカだったこともあり、トランプ大統領への抗議の意味合いから、参加者が少なかったと聞きました。ただ、本当のところは分かりません。
今回、研究発表タイトルを見渡して少し気になったのが、報告タイトルにCSRを用いた研究が目立ったことです。
日本のファイナンス系の学会では、最近はCSRよりもESGをタイトルに含む研究の方が多いという印象を持っていました。一方、今回のAOMでは、CSRという言葉を使った研究が比較的多いようにも感じました。
そこで、CSRをタイトルに用いていた方に、その理由を聞いてみました。アメリカの大学に所属する黒人女性の研究者でしたが、「よくぞ聞いてくれた」という感じで、次のように説明してくれました。
実質的に、私の研究ではCSRはESGと同じような意味で使っているので、ESGとしても良かった。しかし、トランプ政権によるESGの揺り戻しもあり、あえてタイトルはCSRを用いた、とのことでした。
時の政治状況にも研究タイトルが影響されてしまう現実は印象に残りました。
●ESG研究の現在地
企業のESGへの取り組みと企業価値評価との関係を見た研究はそれなりの蓄積があるためか、オリジナリティーを入れるため、心理学的な要素も加味したものも見られました。
そこで目を引いたのは、中国の企業を対象にした研究です。ESGに力を入れる企業と中長期的な企業価値との間には、ポジティブな関係が見られるが、CEOのmasculinity(“男らしさ”)の程度によって、そのESGのポジティブな関係が減じられてしまうと結果が報告されていました。
Masculinityをどのように計測するのかがポイントになりますが、この研究では頬骨間幅(顔の横幅が最も広くなっている部分:Bizygomatic width)を「眉毛と上唇の高さ」で割った比率を用いていました。
統計的には有意な差が報告されていましたが、本当にそういう関係性があるのか良く分かりません。今後はAIによる画像処理技術が発展していけば、これまでは気がつかなかった関係性が新たに見いだされるかもしれません。
この研究発表を聞いている時、「40歳を過ぎたら自分の顔に責任を持て」というフィラデルフィアとの関係が深いエイブラハム・リンカーンの言葉を思い出しました。ただ、遺伝的に決まる顔の骨格とリンカーンのいう顔では、ちょっと違うなとも思いました。
●フィラデルフィアの最後のお土産
フィラデルフィアの空港でお土産を買っている時、手持ちの現金が少し足りず、商品を戻そうとすると、レジ係の人が「不足分は要らんよ」と言ってくれました。街中の店ならあり得る話ですが、ここは空港内の店です。ポケットマネーから足してくれたようでした。こんなこともあるのかと、最後にフィラデルフィアの良い思い出がまた一つ加わりました。
2026年8月16日記 京都大学経営管理大学院 特定准教授 脇屋 勝
