最近、企業経営者の集まりで話をしていると、「親の介護が始まってね」という言葉を耳にする機会が増えました。
以前であれば景気や人材採用、為替や金利が話題の中心でした。しかし最近は、「病院への付き添いで会議を変更した」「遠方に住む親のことが気になって出張中も落ち着かない」といった話が、ごく自然に交わされるようになっています。
実は私自身も、高齢の父を支えながら会社を経営しています。仕事中でも父の様子が気になり、夜中の電話に胸がざわつくことがあります。親を思う気持ちは自然なことですが、その積み重ねが仕事への集中力や精神的な余裕に影響することも実感しています。
こうした立場の人たちは「ビジネスケアラー」と呼ばれます。仕事を続けながら家族の介護を担う人たちですが、この言葉はまだ十分には知られていません。しかし私は、これからの日本を考えるうえで極めて重要なキーワードになると思っています。
少子高齢化は長年語られてきましたが、いま起きているのは、企業の中核を担う50代、60代が介護の当事者になり始めたという変化です。介護はある日突然始まります。昨日まで元気だった親が転倒する。認知症が進む。退院したその日から生活が一変する。誰にでも起こり得る出来事です。
だからこそ、介護を家族だけの問題として抱え込むのではなく、企業や地域社会も支える仕組みが必要です。AIやセンサー技術なども、介護そのものを代替するのではなく、離れて暮らす家族に安心を届ける存在として大きな役割を果たし始めています。
日本は世界で最も早く超高齢社会を迎えました。この課題を最初に経験する国だからこそ、その解決策を世界に示すこともできるはずです。
皆さんの職場では、「ビジネスケアラー」という言葉は聞かれるでしょうか。まだ遠い話に感じられるかもしれません。しかし、この問題は近い将来、多くの人にとって自分自身の課題になります。超高齢社会の日本だからこそ、今から真剣に向き合うべきテーマではないでしょうか。
2026年7月27日記 ai6株式会社 代表取締役 丸茂 正人
