ゴルフに映る資本市場の規律と意思決定(帝京大学 経済学部 教授 黒木 彰子)

ゴルフを私が始めるきっかけとなりましたのは、ささやかながら印象深い出来事でした。

今年、年男を迎えた叔父が、3年前に霞ヶ関カンツリー倶楽部においてエージシュートを達成したと、後日、本人から聞いたことによります。
ゴルフに親しまれている読者の皆様にとっては、日頃から身近な出来事かもしれませんが、その話を語る際の叔父の穏やかで生き生きとした様子が、今も心に残っています。

ゴルフについては、私自身まだ学び始めたばかりですが、実際にプレーする中で、この競技の奥行きの深さを感じます。

とりわけ印象的なのは、プレーヤー自身の規律に支えられている点です。
常に第三者の監視があるわけではなく、ルールの理解と遵守、さらには必要に応じた自己申告によって競技が成立しています。このような在り方は、資本市場における情報開示やコーポレートガバナンスの根幹と通じるものがあるように思います。

また、ゴルフは不確実性と向き合う機会にも満ちています。風の影響やコースの起伏、あるいはその日の体調や心理状態によって、結果は少なからず左右されます。経験を重ねられた方ほど、理想的な一打を追い求めるのではなく、その時々の状況に応じて最善と考えられる選択を積み重ねておられるのではないでしょうか。

例えば、無理にピンを狙うのではなく、安全なエリアにボールを運ぶ判断は、一見控えめですが、全体としての安定したスコアにつながるものと拝察します。

このような意思決定の積み重ねは、資本市場における投資判断とも重なり合うように感じられます。
完全な情報が得られない中で、リスクを見極め、許容し得る範囲の中で選択を行い、その結果を受け止めながら次の判断へとつなげていく姿勢は、ゴルフにおけるコースマネジメントと共通する要素を含んでいるように思われます。

私自身はまだ試行錯誤の途上ですが、エージシュートに象徴されますように、長年の経験の中で培われる規律や判断力が、プレーの質のみならず、その人の佇まいにも表れてくるのではないかと感じております。

ゴルフに向き合う時間の中には、次の一打をどのように選ぶかを静かに考えるひとときがあります。その思考の積み重ねは、不確実な環境のもとで意思決定を行う私たちの日常とも、どこか響き合っているように思えるのです。

(2026年4月15日記 帝京大学 経済学部 教授 黒木 彰子)