「40%目標」を考える(SMBC日興証券 経営企画部 シニアアリサーチャー 村松 健)

高市政権の日本成長戦略は、成長投資を促進する「17の戦略分野」が注目されていますが、金融についても様々なチャレンジが織り込まれています。

特に注目されるのは、成長資金の供給拡大の観点から、「2040年までに、家計金融資産に占める株式・投資信託・債務証券(債券)の割合を40%とする」ことではないでしょうか。

「貯蓄から投資へ」という有名なキャッチフレーズに象徴されるように、家計金融資産における現金・預金の占める割合の大きさは、日本経済の特徴でしょう。
日本銀行の資金循環統計によると、2026年3月末の時点で、日本の家計金融資産は2,400兆円ですが、リスク性資産(株式・投資信託・債券)の割合は、25.1%です。一方、米国は61%、欧州は40.4%となっています。

40%目標は達成可能なのでしょうか?

概算ですが、40%は日本経済の成長により株式や投資信託の資産価値が倍増すれば、近づく水準です。日本でも1988年には家計金融資産900兆円に対しリスク性資産が300兆円まで拡大し、比率も33%まで上昇しました。

当時はバブル期であり、株高が資産増を主導しましが、足元の状況はどうでしょうか。日本経済に過去のような高成長が期待できない中、40%目標達成のためには、株高だけでなく現金・預金からリスク性資産への移転が欠かせません。
たとえば、家計金融資産2,400兆円を前提とすれば、400兆円の移転が必要となります。

この際、問題になるのが、リスク性資産の保有が高齢者に偏っていることです。
高齢者は、生活のため積み上げてきた資産の価値を維持し、計画的に取り崩して利用していくことが自然な姿です。

よって、高齢者に対し価格変動リスクが相対的に高いリスク性資産をさらに積み増していくことは、期待すべきではないでしょう。つまり、40%目標達成のためには、現役世代が40%を超え、貯蓄の相当程度をリスク性資産に振り向けることが求められます。

現役世代は長期投資が可能であり、現役世代によるリスク性資産への投資拡大は、合理的な発想です。一方自身に照らして考えると、住宅資金や教育費などの支出ニーズが旺盛であることや、リスク性資産が減価する可能性などをふまえ、貯蓄の大宗をリスク性資産とするような、大胆なアクセルを踏み込むことは、難しいものように思われます。みなさんはいかがでしょうか?

40%目標をめぐっては、上記以外にも様々な課題がありそうです。今後、解像度の高い議論が進展することを期待したいと思います。

2026年9月14日記 SMBC日興証券 経営企画部 シニアアリサーチャー 村松 健