ミツバチ(京都大学経営管理大学院客員教授 香月 康伸)

近所に小さな畑を借りています。
春夏野菜の季節には、私の頭はズッキーニでいっぱいになります。授粉が悩ましいのです。

確実に授粉させるには、雄花を摘み取って、花粉を雌花の雌しべにつける“人工授粉”が必要です。しかし雄花と雌花が咲くタイミングが合わない。しかも、朝早くにしか咲かない。気が気でなく、日の出前の4時過ぎには目が覚める日々が続きます。そこで思うのです。ミツバチがたくさん来てくれたらいいのに、と…。

ミツバチは食料供給の1/3を授粉しているといわれますが、世界中で減少している。原因は気候変動と農薬。熱波や猛暑が続くと、ミツバチの認知能力や繁殖能力がさらに低下することが懸念されています。

毎夏、ESG関係者のリーディングリストに挙げるのが、マヤ・ルンデの「蜜蜂」です。
1852年のイギリス、2007年のアメリカ、そして2098年の中国という3つのパラレルワールドの物語ですが、その背景設定は次のとおり。

2007年、女王バチと幼虫を巣箱に残して、ミツバチが大量失踪する事象が米国で社会問題となり、CCD(鉢群崩壊症候群)と命名される(これは実際の話)。2030年代に入ると、農業に深刻な影響が出始、飼料生産が激減し、食肉生産も壊滅的打撃を受ける。農薬を禁止したことで食糧危機となり、遺伝子組み換え植物が普及。しかし、ミツバチの減少は止まらず、昆虫を激減させたことで、それを餌にする鳥類が激減。食物連鎖の上位にも影響して、生物多様性は崩壊の危機に至る
そして、2045年、遂にミツバチは絶滅。地球は、10億人単位の人口を養える星ではなくなる…。

ディストピア小説でありながら、希望も残して終章を迎えますが、「ミツバチが絶滅したら4年後に人類は絶滅する」というアインシュタインの(言ったといわれる)警告が蘇ります。

どうすればいいのか?
「強いサステナビリティ」と「弱いサステナビリティ」という概念があります。両者の違いは、「人工資本で代替可能かどうか」という点。

例えば、持続可能なズッキーニ栽培を楽しむための解決策を考えると、ミツバチを保全する里山整備は「強いサステナビリティ」。そして、超小型みつばちAIドローンの開発は、「弱いサステナビリティ」となります(実現すれば、名前はハッチかマーヤが良いでしょう)。

人工昆虫を使った受粉の基礎研究など、すでに様々な挑戦は始まっています。

2026年8月26日記 京都大学経営管理大学院客員教授(みずほ証券サステナビリティ推進部) 香月 康伸