なぜ私は一橋大学認定VCを立ち上げたのか(株式会社C1 Capital 代表取締役 沼田 朋子)

新卒でベンチャーキャピタルの世界に入り、20年余りになります。
就職氷河期のさなかに飛び込んだこの業界で、数多くの起業家と挑戦を共にしてきました。このたび、長く勤めた会社を離れ、一橋大学認定VCを仲間と二人で立ち上げました。なぜ安定を手放し、あえて険しい道を選んだのか。その理由をお話しさせていただきます

きっかけは、長年の投資経経験の中で積み重なった課題意識にあります。日本では近年、自らの技術シーズを事業化しようとする研究者には、公的資金を含めて相応のお金がつくようになりました。

しかし、そのシーズを活かして社会課題を解決しようとする経営の側には、光が当たりにくいのが現実です。宇宙デブリ除去に挑むアストロスケールへの投資に関わった経験から学んだのは、困難で時間のかかる挑戦も、優れた経営と結びつけば大きな価値を生むということでした。

私たちが「Deep Issue」と呼ぶ領域、例えば気候変動や医療、食料安全保障や社会レジリエンスといった難題に向き合うのは、単に社会貢献のためではありません。誰も解けていない大きな課題にこそ、大きな事業機会が眠っていると考えるからです。

私たちの独自性は、投資先の探し方にあります。多くのVCは、まず有望な技術シーズに着目し、それを率いる経営者を後から探します。

私たちは、その順序を逆にします。まず、難しい社会課題に挑もうとする優れた経営人材を見出し、その人のミッションに合致した研究シーズを大学や研究機関の中から獲得しにいきます。志ある経営人材のもとにこそ、優秀な仲間も資金も集まり、結果として事業の成否を分けると考えるからです。社会科学の雄である一橋大学と組む意味もここにあります。
経営と事業構築の知、そして卒業生ネットワークこそが、私たちの最大の資産です。

もちろん、簡単な話ではありません。少人数での立ち上げ、LP獲得の厳しさ、大学との関係構築、長期投資とリターンのバランス。答えのない問いばかりです。それでも、一つずつ向き合っていくほかありません。

VCは単なる資金の出し手ではありません。人と技術と社会課題をつなぎ、社会を前へ進める存在でありたいと考えています。日本のイノベーション・エコシステムに新しい型をつくるこの挑戦に、共感してくださる方と、ぜひご一緒できれば幸いです。

2026年7月6日 記 株式会社C1 Capital 代表取締役 沼田 朋子